【最終章】報告を減らすには、業務を再設計せよ

「報告を減らしたい」

このシリーズは、その一言から始まりました。
会議が多い。資料が多い。確認が多い。
そして、その“多さ”が、仕事のスピードを鈍らせている。

だから私は、「報告を減らす方法」を書こうと思った。

けれど、書けば書くほど、違和感が出てきました。
私は本当に「報告」を減らしているのか?
それとも、別の何かを直しているのか?

最終回は、その答えを書きます。
結論から言うと――

私は、単に報告を減らしたのではなく、業務を設計し直していました。


第1章|報告に追われていた頃の自分

私は、社内でルール化された“重要な報告”に関わっていました。
役員が参加する会議や報告は、会社のガバナンスを支える仕組みです。
だから当然、手続きも、様式も、参加者も、運用も、きっちり決まっている。

ただ、現場側から見るとこうなる。

  • 会議のたびに資料を作る
  • 事前に確認を取りに行く
  • 日程調整で疲弊する
  • 報告して、宿題を持ち帰り、また次の報告で確認する
  • 関係者が増え、時間が増え、スピードが落ちる

役員の時間が貴重なのは分かっていました。
でも、それ以上に、現場の提案者や事務局が消耗していくのが見えていた。

「何度も同じ説明をしている」
「同じ論点で止まっている」
「いま必要なのは、報告じゃなくて前進だ」

そんな感覚が積もっていきました。


第2章|“効率化”だと思っていた

当時の私は、これを「改善」「効率化」と捉えていました。

  • 資料枚数を減らす
  • 会議を減らす
  • 説明を短くする
  • 手順を簡略化する

いわゆる“ムダ取り”です。

しかし、あるとき課長に相談した際、言われたのです。

「それ、効率化というより、ルールとルールを融合させる話だよね」

その瞬間、頭の中で何かが切り替わりました。
私は単に作業時間を削っているのではなく、
業務の構造そのものに触れているのかもしれない、と。


第3章|仕事が滞る原因は「決裁の分断」

私が扱っていた報告は、ざっくり言うと2つの段階に分かれていました。

  • 企画段階の会議体
  • 実行段階の会議体

それぞれ管理している部署も違う。
見ている論点も似ている。
なのに、ルールは別々で、接続が弱い。

この状態で起こるのが、決裁の分断です。

企画で承認されたはずなのに、実行でまた同じ観点を説明する。
同じ論点を、別の会議体で、別のメンバーに、別の資料で。
結果として、承認は進んでいるのに、業務が進まない。

仕事が重くなる原因は、仕事量そのものではなく、
**「判断(決裁)の取り方が分断されていること」**だった。

ここに手を入れない限り、
資料を減らしても、会議を減らしても、本質は変わらない。
そう確信しました。


第4章|減らす前に決めるべき「省略の基準」

私が最初に着手したのは、会議の削減でも、DXツール導入でもありません。
「役員報告を省略できる基準」の設計でした。

なぜ基準なのか。

会議体の構造や、資料テンプレートや、エントリー手続きは、すでに確立されていました。
そこを壊すと現場が混乱します。

一方で、「省略できる/できない」の基準が曖昧だと、もっと危険です。

  • エントリー忘れなのか
  • 省略対象なのか
  • 誰が判断したのか
  • ガバナンス的に問題ないのか

これが曖昧なまま“省略”を始めると、後で必ず揉めます。
監査の観点でも、社内の信頼の観点でも、詰みます。

だから、最初に必要だったのは、
ガバナンスが担保できる、省略の基準でした。


第5章|一番迷った「イレギュラーの線引き」

省略基準を作る上で、私の基本コンセプトは一つでした。

「イレギュラーな案件は、必ず役員の場に出てくるようにする」

役員との対話が必要な案件が、誤って省略されてしまう。
これは、絶対に避けなければならない。

そこで、イレギュラーを判断する条件を、2つに絞って言語化しました。

  1. 企画段階より実行段階で費用が上がる場合
  2. 企画承認を待たず、費用の実行が緊急に必要な場合

この2つに当てはまらないなら、
基本的には“淡々と順調に進んでいる”とみなせる。

そしてもう一つ、絶対に省かなかった関所があります。
中間管理職による全案件確認です。

役員が見ているのは「費用の必要性」や「事業効率」。
一方で、費用の確からしさを細部まで判断できるのは、現場に近い中間管理職です。

ここを省くと、第三者チェックが消え、ガバナンスが壊れます。
だから残す。これは早い段階で合意できました。


第6章|「外れ値」の案件は、対面が最速

よく「全部、書面審査にすればいい」「全部、対面の会議をなくせばいい」と言われます。
でも、私はそうはしませんでした。

なぜなら、案件には外れ値があるからです。
進捗も、課題も、リスクも、一律ではない。

役員との対話があることで、逆に進む仕事もたくさんある。
指示が一回で揃い、関係者が迷わず動ける案件もある。

だから私は、効率だけを100点にするのではなく、
現場と役員の双方が安心できる「余白」を残す設計を選びました。

削ることより、壊さないこと。
速くすることより、止まらないこと。

これが、私が最後に辿り着いた設計思想でした。


第7章|私は「報告を減らす」という言葉を使わなくなった

このシリーズを書き始めた頃、私は「報告削減」という言葉を使っていました。
でも途中から、「業務設計」「再設計」という言葉のほうが、しっくり来るようになりました。

理由は単純です。

報告を減らしたのではなく、
判断(決裁)の取り方を、一度に集約できる形に作り直したからです。

これは、作業を早くする話ではありません。
仕事を前に進めるための、構造の話です。


第8章|AI時代は「業務設計者」が中核となる

少子高齢化が進み、人が増えない。
一方で、生成AIによって、作業は加速度的に自動化されていく。

そうなると、価値の中心は移ります。

「作業が速い人」だけでは差がつきにくくなる。
むしろ、次に評価されるのは――

業務を設計できる人
仕事の流れを、構造として捉え直せる人
判断の取り方を、再現可能な形に整えられる人

だと私は思っています。

実際、私がやったのは、資料を早く作ることではありませんでした。
会議をうまく回すことでもありませんでした。

  • どこで決めるのか
  • 何を条件に省略できるのか
  • イレギュラーをどう拾うのか
  • ガバナンスをどこで担保するのか

こうした「設計」を、現場の言葉で、運用できる形に落とし込んだ。
それが結果として、仕事を軽くし、速くし、そして止まらなくした。

この経験を通じて、私は確信しました。

報告を減らすとは、業務を再設計すること。
そして、それはこれからの時代、ますます必要になる力だ、と。


おわりに|「何度も同じ報告をしている」と感じたら

もしあなたが、

「また同じ説明をしている」
「同じ論点で止まっている」
「会議が増えているのに前に進まない」

そう感じたことがあるなら、
削る前に、ぜひ一度だけ立ち止まってみてください。

その重さの原因は、作業量ではなく、
決裁の取り方が分断されていることかもしれない。

そして、解決策は「頑張る」ではなく、
判断を一度に集約できる形を探すことかもしれない。

このシリーズが、そのきっかけになれば嬉しいです。


※追記

本シリーズの“現在進行形”の実践記録は、noteで継続しています。
https://note.com/hokokusakugen

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