第三章-②:DX導入前に見直すべき“人の手順”

報告を減らす

DX導入で失敗する最大の理由は、“人の手順”を見直していないことにあります。

「DXツールを導入したけど、結局報告は減らなかった」

そんな経験はありませんか?

DX導入が思うように進まない企業には、共通点があります。

それは、

古い手順の上に、新しいシステムを乗せてしまっていること。

私が読んだ『ホワイトカラーの生産性はなぜ低いのか』でも、

DXの前提として「仕事が標準化され、全体最適になっていること」が強調されていました。

しかし現場では、どうしても「今ある業務」をそのままシステム化しようとしがちです。

その結果、ツールが増えるほど業務が複雑になり、かえって負担が大きくなる。

これは決して珍しいことではありません。

実際、私の職場でも、承認プロセスにムダが残ったままDXを進めてしまい、

紙の手順をそのままデジタルに置き換えただけ──
そんな状態になってしまった経験があります。

本来、DXとは“ツールを入れること”ではありません。

まず 人の手順そのものを見直すこと。

ここを丁寧に整えていくことで、初めてDXは効果を発揮します。

今回の記事では、DX導入の前に見直すべき
“人の手順の整え方” について整理していきます。


DXは“標準化されていない仕事”には効果を発揮できない

DXという言葉は華やかですが、
実際には 標準化されていない業務には乗せられません。

理由はシンプル。

  • 人によってやり方が違う
  • 判断基準がバラバラ
  • 入出力の情報が統一されていない

この状態でDXツールを導入すると、

機能が合わない/現場に定着しない

——どちらかになります。

あなたにもこんな経験ありませんか?

  • 「この機能、現場の実態と合わない」
  • 「結局エクセルと併用している」
  • 「システムに合わせるために手順が増えた」

これはツールが悪いのではありません。

手順の整理が不足したままDXを進めたことが原因です。


部分最適のDXは“ツギハギの自動化”になってしまう

DXが失敗する典型例は以下です。

  • A部署がA用のツールを導入
  • B部署は別のツールを導入
  • C部署は紙の業務が残る

結果、情報がつながらない。

つまり、

部分最適化 × 部分最適化 × 部分最適化
= 全体として非効率が増す

「ツギハギDX」の正体です。

あなたの会社でも、

  • ツールが部署ごとにバラバラ
  • 手作業で連携
  • 業務がかえって煩雑に

こんな事象はないでしょうか?

これはDXの典型的失敗パターンです。


DX導入前に必ず見直すべき“人の手順”とは?

DXの前に、まず人が行っているプロセスを整理する必要があります。

私の経験上、次の 3つが最重要 でした。


① 承認プロセス(誰が・何を判断するのか)

承認プロセスが複雑なままDXを導入すると、
複雑さがそのままシステムに移植されます。

結果:

  • 画面遷移が多すぎる
  • 承認ルートがムダに長い
  • アップロード資料が増えて手順過多

私の職場でも、費用申請の対面報告を減らすためにDXを導入したのに、
「誰が何を判断するか」が曖昧なまま。

そのせいで、

対面報告+システム対応の二重手間

そんな状況になっていました。

DXより先に、

  • 最終判断者は誰か
  • その判断に必要な情報は何か

これを明確にすることが先でした。


② 目的の分類(承認 / 共有 / 記録)

DX前に必ず整理すべきポイント。

  • 承認 → 最小限でOK。書類審査で代替可能
  • 共有 → 定期レポート化・ツール化可能
  • 記録 → DXが最も得意

多くの企業は、
「承認」と「共有」を会議でやり、
「記録」だけをデジタル化しています。

まず会議の目的を

承認 or 共有

で仕分けし、
必要なら「記録」として残します。


③ 重複作業・二重入力の解消

DXで最もムダが現れる部分です。

  • 同じ情報を別ツールに入力
  • エクセル → システム → メール の三重作業
  • 部署ごとに同じ資料を作成

DXは魔法ではありません。

ムダな手順が残ったまま導入すると、ムダをデジタル化するだけ です。


DXは“手順が整理されたあと”にこそ本領を発揮する

DXの目的は「自動化」ではなく「最適化」。

  • 手順を整理
  • 判断基準を明確化
  • 標準化

この土台が整って初めて、DXは10倍の効果を発揮します。

私の職場でも、

承認プロセス簡素化 → 書類審査導入 → DX導入

この順番にしたことで、業務が一気にスムーズになりました。

DXとは、

ツールを変えることではなく
働き方を再設計すること

だと感じています。


今日からできる「DX前の手順見直しチェックリスト」

  • この手順は誰の判断に必要?
  • 承認 / 共有 / 記録 のどれ?
  • 同じ情報を2回以上入力していない?
  • 会議の目的は明確?
  • 承認者・意見者が多すぎない?
  • 本来の判断者に届いている?
  • “安心のためだけ”の手順になっていない?

これだけでも、DXの効果は大きく変わります。


まとめ|ツールではなく“手順”を変えることがDX成功の鍵

DX導入はゴールではありません。

大切なのは、

ツールの前に、手順を変えること。

手順が整理され、判断基準が明確になり、
プロセスが全体最適になって初めて、DXは成功します。

あなたの職場にも、必ず変化は起こせます。


関連リンク

💡この記事は連載「報告の省き方」シリーズの第3部です

🧭 次の記事:「ボトムアップで組織を変えるための根回し術」(仮)
📝 noteでも思想編を連載中:なぜ私たちはムダな報告を続けてしまうのか
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